励ましたつもりの一言が、かえって相手の気持ちを冷めさせてしまうことはありませんか?
「つらいと思うけど、会社のために頑張ってくれ」。
よかれと思ってかけられたその言葉を、dazzly代表の筒井は「嫌だった」と振り返ります。
なぜ、励ましのはずの言葉が届かなかったのでしょうか。今回は、その違和感の理由をたどります。
良い上司たちは、その言葉に頼らなかった
「私が出会った良い上司列伝」の番外編として、今回は逆の話を取り上げます。
筒井が印象に残っているのは、「会社のために頑張ってほしい」という趣旨の言葉です。
どちらかというと、私はこういうことを言われずに育ってきたので、言われた時のこの嫌な気持ちにびっくりしたんですよね。
初めて言われた時の反応は、怒りですらありませんでした。
「え」と思いました。
何を今言われているんだろう、という戸惑いでした。
それくらい、それまで言われてこなかった言葉でした。
「仕事だからさ」といったニュアンスの話はあったはずだと言います。
けれど、「会社のため」という言葉や、それを強く感じさせるような言い方を、直属の上司からされた記憶はありませんでした。
プロジェクトを最後まで形にするのが厳しく、全員が疲弊している。うまくいかなければ、会社にも大きな損失が出る。
そんな局面であれば、「会社のために頑張ってほしい」という言葉が出てきても不思議ではありません。
それでも、筒井がこれまで出会ってきた上司たちは、そう言わなかったといいます。
その理由を、筒井はこう推し量ります。
もしかしたら皆さんが、「会社のために」と言われても自分も響かないから、部下にも言っていなかった。
そういう可能性は、今思うとあるような気もしますよね。
もちろん、仕事には「会社のため」という側面もあります。ただ、それだけでは人は動かない。
筒井が出会ってきた上司たちは、自分自身もそう感じていたからこそ、部下に対しても「会社のためだから」と一言で片づけなかったのかもしれません。
言い換えれば、「会社のため」という言葉だけに頼らず、目の前の相手に届く伝え方をしていたのだと思います。
だからこそ、後になってその言葉を強く使われた時に、違和感が残ったのかもしれません。
「規則だから」で、説明を終わらせない
似た違和感を覚えた場面が、ほかにもありました。
一つ目は「規則」です。
「これはしょうがない。会社の規則だから」としか言われない。
こういうことをやりたいと提案しても、「できない、規則だからさ」と返ってきます。
規則があること自体は理解できます。
しかし、引っかかったのは、「なぜその規則があるのか」「なぜ今それを守る必要があるのか」といった説明がないことでした。
規則そのものよりも、「規則だから」で話を終わらせようとしているように感じたことに筒井は違和感がありました。
二つ目は、目標面談でした。
筒井は、目標を定量で書くのが苦手です。
無理に数値化すると、何のためにやるのかわからない、本末転倒な目標になってしまうと感じるからです。
それでも、「目標は定量で測れるようにしないと評価できないから」と言われ続けました。
これまではずっと定性でやってきたし、他の上司は定性でも受け止めてくれた、と伝えてもです。
この二つの場面で筒井が感じた違和感には、共通するものがあります。
規則、評価、制度。
それ自体に問題があるわけではありません。
ただ、それを理由として示すだけでは、「なぜ今それが必要なのか」「なぜこの人にそれを求めるのか」が伝わりません。
違和感の根底にあったのは、自分の状況や考えを踏まえた説明がないまま、規則や制度だけを理由として示されたことでした。
励ましのはずが、気持ちを遠ざけた
その違和感が、はっきりと形になった場面がありました。
板挟みになり、消耗していたプロジェクトの時です。
自社に戻って状況を話していたところ、直属ではない上の立場の人から「つらいと思うけど、会社のために頑張ってくれ」と言われました。
その方としては、おそらくエールのつもりでした。しかし、筒井が返した言葉は反射のようなものでした。
「会社のためは嫌です」と返していました。
会社のためだけって、こんなにつらいんだよ、今私は一人で頑張ってるんだよ、みたいな気持ちがおそらく当時はあったんでしょうね。
その時、筒井の中ではっきりしたことがありました。
私のモチベーション、仕事をしている意味、やりがい、しんどいけどなんとか頑張ろうと思えるもの。
「会社のために頑張ってくれ」と言われても、それは私が頑張る理由にはならないんだな、と感じた瞬間ですよね。
励ますためにかけられた言葉でした。
それでも筒井には、自分が何のために頑張っているのか、何を支えにここまでやってきたのかとは、別の方向を向いているように聞こえました。
だからこそ、励まされるというより、かえって気持ちが離れてしまったのだと思います。
「会社のため」が入ると、自分に向けられた言葉ではなくなる
その会社が嫌いだったわけではありません。好きな会社でしたし、好きな人たちも多かったといいます。
それでも、ひとくくりに「会社のため」とまとめられることには違和感がありました。
「そんな雑な感じにまとめないでよ」という感覚です。
「会社のため」と言われてしまうと、社員側は反論しづらくなります。
さらに筒井には、それまで伝えてきたことが一括りにされてしまったようにも感じられました。
これがつらい。
ここがうまくいっていない。
だから、こうできないだろうか。
そうした話を重ねてきたにもかかわらず、最後に「会社のために頑張って」と返される。
多分「会社のために」というキーワードがなかったら、もう少し怒りは静まっていたと思います。
「つらいと思うけど、お前頑張れよ」みたいな感じだったら、私に向けられているなと思えるからです。
「会社のために」と入った瞬間、こっちに向いていない気がします。
筒井が「会社のために」という言葉に引っかかった理由は、ここにありました。
「つらいと思うけど、頑張れよ」なら、自分の状況を見てもらえていると感じられる。
けれど「会社のために」が入った瞬間、自分が今どういう状態なのかよりも、会社の都合の方が優先されたように聞こえてしまう。
同じ「頑張ってほしい」というメッセージでも、受け取り方は大きく変わります。
言葉を封じる前に、自分の価値観を見る
では、どんな言葉だったらよかったのでしょうか。
代わりの言葉はいくつか考えられます。
たとえば、「他のメンバーも頑張っているから、一緒にやっていこう」。
あるいは、会社という大きな主語ではなく、今一緒に働いている人や、目の前のチームのために頑張るという伝え方です。
抽象的な組織ではなく、本人にとって実感のあるものに言葉を近づける。
そういう伝え方ならありだと、筒井も話しています。
一方で、言葉選びに慎重になりすぎることへの懸念もあります。
最近は、「何を言っても問題になるから、もう何も言わないようにした」という話を聞くこともあります。
必要なことまで伝えなくなってしまっては意味がありません。
だからこそ、筒井が大切だと考えているのは、NGワードを覚えることではありません。
ご自身の価値観というか、考え方みたいなものを一度見つめてみるのが、一番良い気がします。
自分がどういう価値観の中で仕事をしていて、人生の中に仕事がある、会社がある、みたいなところを一回見てもらえると良いと思います。
自分は仕事をどう捉えているのか。
会社は、自分の人生の中でどんな位置にあるのか。
自分自身の価値観が見えてくると、他の人が違う考え方をしていることにも気づきやすくなります。
「自分にとっては会社のために頑張ることが大切でも、この人はそうではないかもしれない」。
そう考えられれば、同じ言葉を誰にでもそのまま当てはめることも少なくなるはずです。
大切なのは、「会社のために」と言ってはいけない、と覚えることではありません。
目の前の相手が、何を支えに仕事をしているのかを見ようとすることです。
あなたが部下に「頑張ってほしい」と伝えるとき、その言葉は、その人自身に向いているでしょうか?
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記事について
株式会社dazzlyの公式Podcast「「会社のために頑張れ」が部下を冷めさせる理由」での対話内容をもとに、DX推進や組織マネジメントを考える皆さまに向けて再構成したものです。
ITツールの活用やDX推進に関する課題やお悩みがあれば、お気軽に弊社までご相談ください。
Podcast:
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出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井里美
編集・構成:dazzly編集部

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