「できない部下」に必要なのは、叱責ではない。真正面から向き合いながら、ガスを抜く

伸び悩む部下を前に、どう接するべきか迷うことはありませんか?
厳しくするか、甘くするか。その二択ではなく、本人がもう一度前を向けるような関わり方があるのかもしれません。

目次

行き詰まりの正体は、スキル不足だけではない

「私が出会った良い上司列伝」の続きとして、今回は「できない部下」との向き合い方を取り上げます。

ここで言う「できない部下」とは、dazzly代表の筒井自身のことです。

IT業界に入ったものの、エンジニアとしての適性はほぼなかったと本人は言います。

話は入社2年目か、3年目になる手前あたりのことです。
仕事を辞めよう、環境を変えようと思い、転職を考えるほど行き詰まっていました。「本当に向いていない」と感じていたそうです。
もちろん周囲からは、若手のうちはスキルが足りなくて当然だと言われます。

経験を積めばいい。
勉強すればいい。

ところが、その勉強がとにかくできませんでした。興味が持てなかったからです。
技術系の教材も、本も雑誌も、開けば同じような感覚になりました。

カタカナが頭に入らない、アルファベットが頭に入らない、何のことだろう、となってしまうんです。
ここでつまずくんだから、やっぱり私はこっちの人種じゃないんだな、と思うようになりました。

会社に行くのも気が重い。何の役にも立てていない。
当時の筒井に必要だったのは、単に知識を増やすことだけではありませんでした。

「自分には向いていない」と思い、学ぶこと自体から気持ちが離れている。
そんな状態では、教材や研修を増やしたとしても、なかなか前には進めません。

向き合うとは、時間をかけることでもある

その状況を見かねてか、「このままでは筒井がダメになる」「まずはプログラミングをきちんと身につけさせよう」という話があったのだと思う、と本人は振り返ります。

そこで手を挙げたのが、同じプロジェクトの先輩でした。
本当に親身に先生役を引き受けてくれて、ほぼ付きっきりと言っていいほどでした。
プログラミングとはどうやるのか、その方法や気をつけることまで、かなり細かなところまで教わったといいます。

ただし、この先輩は教育担当として配置された人ではありませんでした。

先生役として入っているわけではないので、当然その人自身の仕事もあります。その仕事をしながら、筒井のために時間を割いてくれていました。

「部下と向き合う」というと、声のかけ方や姿勢の話になりがちです。
けれど筒井が覚えているのは、実際に時間を使い、わからないところに付き合ってくれたことでした。

教えるだけではなく、息抜きできる余白を残す

とはいえ、教わる側の顔はなかなか晴れません。わからないものは、やはりわからないからです。
つまらなそうな顔をよくしていたんだと思います、と筒井は認めます。

そこで先輩が持ち出したのが、仕事の外にある共通の話題でした。たまたま二人とも野球好きだったのです。

「別にいいよ、中継を見ていても」と言ってくれました。
残業をしている時などは「いいよ、いいよ、見ていても」と言われて、野球を見ながら作業をしていました。

野球中継を見ることを許してくれたからといって、仕事を甘く見ていたわけではありません。

できないことばかりに意識が向いていると、仕事そのものが苦しくなっていきます。
そんな中で、好きなものに触れられる時間が、少し肩の力を抜くきっかけになっていました。

当時、筒井は突然スターウォーズにはまり始めていました。その話をすると、先輩も昔から好きだと言います。

ここから、独特のやりとりが生まれました。苛立っていたり、機嫌が悪かったりするときに、こう言われるのです。

「落ち着いて、まだダークサイドに落ちてるから」というようなことを言われました。
それで私も「ダークサイドにやっぱり落ちちゃいますね」と返していました。

伝えていることは、要するに「少し落ち着こう」です。けれど、受け取り方はまるで違いました。

普通に「イライラするなよ」と言われるよりも、「ダークサイドに落ちてるよ」という、同じことを示すのに違う言葉遣いを使ってくれるだけで、すごく急に楽になるんです。

言っている内容そのものを変えたのではなく、伝え方を変えただけです。
それでも、筒井にとっては受け止めやすさが大きく変わりました。

どうすれば少しでも仕事を楽しめるか。
どうすれば、もう一度やってみようと思えるか。

先輩なりに、筒井に合う関わり方を探してくれていたのだと思います。

そして結果は、本人にとっても意外なものでした。

初めて、仕事って楽しいんだ、と思いましたね。

転職を考え、「自分には向いていない」と思っていた時期です。あの出来事がなかったら辞めていたと思う、と振り返ります。

一度でも「仕事って楽しい」と思えたことで、仕事への向き合い方も、学ぶことへの気持ちも少しずつ変わっていきました。社会人として最低限越えなければならないところを、一緒に越えさせてもらった経験だったと振り返ります。

質問できる状態を、どう守るか

いま振り返ると、当時の自分はとんでもなくできていませんでした。
それでも、「わからない」と安心して言える状態は保たれていました。

知らないとか、できないみたいなことに対して、フィードバックやアドバイスはしてくれるけれど、叱責するということが、そのタイミングでされていないはずなんです。

「そんなこともわからないのか」は冗談として口に出ます。けれど、本当に怒っているわけではないことが伝わっていたといいます。

詰められている感覚がありませんでした。
その安心感があったからこそ、「わからない」「この部分はどうなのか」と、わからないままにせず聞くことができました。

できない状態が続くと、質問すること自体がだんだん嫌になることがあります。

「またわからないと思われるのではないか」
「こんなことも知らないのかと思われるのではないか」

そんな恥ずかしさが、質問をためらわせます。

質問できなくなれば、教える側も、本人がどこでつまずいているのかわからなくなります。
だからこそ、できていないことはきちんと伝えながらも、安心して質問できる状態を残しておくことが大切なのかもしれません。

肩に力を入れないから、続けられる

では、その先輩はどんな気持ちで向き合っていたのでしょうか。筒井は、意外なほど気負いがなかったのではないかと想像しています。

「自分が何とかしなければ」という気負いではなかったと思います。
たまたまそのタイミングで私がメンバーになって、たまたまメンバーの状態がそういう感じだったのでしょう。
上の人間としてどう接するかと考えた時に、できることはやろう、と思ってくださったのかなと想像しています。

肩に力が入りすぎていなかったからこそ、野球やスターウォーズの話もできたのかもしれません。
「なんとかして成長させなければ」と構えすぎていたら、こうしたやりとりは生まれなかったでしょう。

気負いすぎない一方で、教えるときには丁寧に向き合う。筒井が救われたのは、その両方があったからでした。

育成というと、「厳しくするか」「優しくするか」という二択で考えてしまいがちです。
でも、この先輩がしていたのは、そのどちらかではありませんでした。

できないことには真正面から付き合う。
必要なことはきちんと教える。

その一方で、野球を見たり、スターウォーズの言葉で笑ったりできる余白も残しておく。

真正面から向き合いながら、ガスは抜く。

その両方があったからこそ、筒井は「できない自分」に行き詰まったままではなく、もう一度仕事に向き合うことができたのだと思います。

部下がうまくいかず苦しんでいるとき、教えること以外に、少し肩の力を抜ける関わり方はできているでしょうか?

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記事について

株式会社dazzlyの公式Podcast「「できない部下」と真正面から向き合う」での対話内容をもとに、DX推進や組織マネジメントを考える皆さまに向けて再構成したものです。

ITツールの活用やDX推進に関する課題やお悩みがあれば、お気軽に弊社までご相談ください。

▶︎ 株式会社dazzly ホームページ

Podcast:

Apple Podcasts
183.「できない部下」と真正面から向き合う Podcast Episode · DX時代の勝ちに行く組織マネジメント · July 28 · 14m

Spotify:

出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井里美
編集・構成:dazzly編集部

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