「便利だと思って使い始めたはずなのに、気づけば“使わされている”ような感覚になることがある──」
そんな体験、心当たりはないでしょうか?
たとえば旅先で使ったプリペイド型の電子決済カード。
支払いも交通機能もこれ一枚で完結する“便利な仕組み”のはずが、微妙に余った残高を使い切ろうと、買う予定のなかった商品を探し回る自分がいる。
本来は手段であるはずの「ツール」に、気づけば行動を支配されてしまっている――。
今回のテーマは、そんな体験をヒントにした
「ITツールに振り回されないためにどうすれば良いか?」 です。
ツールだらけの時代、「選べない」という課題
現代のビジネスシーンには、あらゆるITツールが存在します。
会議、チャット、業務管理、社内コミュニケーション、勤怠、人事…。領域ごとに膨大なサービスがひしめき合い、その全貌を俯瞰することすら困難です。
「もう“カオスマップ”と呼ばれているぐらい、各ジャンルに無数のツールがあります。この業界にいる私でも、正直追いつけないほどです」
そう語る弊社代表の筒井。実際、日々相談を受ける中で「どれが一番良いんですか?」「どれを選べば間違いないですか?」という声は後を絶ちません。
けれど、こうした問いに対する“正解”は存在しないのが実情です。
「ツールは常に進化し、入れ替わっていきます。だからこそ、最初から“完璧な正解”を求めすぎず、今の自分たちにフィットしそうなものを小さく試す姿勢が大切です」
小さく始めて、合うかどうかを“体感”で確かめる
「正直、使ってみないとわからない」
これは、多くの現場でツール導入に関わる人が抱える実感です。
そこで有効なのが、トライアルを前提としたスモールスタート。
筒井が提案する、デジタルツールとの健全な向き合い方はこうです。
「まずは少人数で試してみる。そこで“いけそう”という手応えがあれば、少しだけ規模を広げてみる。いきなり全社導入ではなく、段階を踏んで進める」
このようなステップを踏むことで、「導入したけど誰も使わない」といった悲劇は避けられます。
組織にとって“良いツール”は、個人の好みとは限らない
ITツールの選定で見落とされがちなのが、「使うのは人」であるという前提です。
操作画面、色味、UIの感触…。こうした要素は、実は“好き/苦手”といった個人の感覚に大きく左右されます。
しかし、組織が目指す方向性に合っているかどうか、という判断軸はまた別です。
「すべての人に“好かれる”ツールは存在しません。
だからこそ、好みよりも“目的”を優先する。組織としてやりたいことに最も合うツールは何か、という視点が重要なんです」
ITリテラシーの差を、どう扱うか?
ツール導入の場面では、社内のITリテラシー格差も大きなハードルになります。
「全員が使いこなせるか」「苦手な人にも合わせるべきか」──そのバランスは簡単ではありません。
ただ、それを“制約”と見るか“設計要件”と見るかで、導入プロセスは大きく変わります。
「最先端のツールを使いこなすことで、“こんな組織を目指したい”というビジョンがあるなら、それを文化として育てていくことも選択肢だと思います」
逆に、「誰もがすぐに使えること」を重視するなら、シンプルで浸透しやすいものを選ぶ方が良いでしょう。
大切なのは、“誰に合わせるか”ではなく、“組織として何を目指すのか”に立ち返ることです。
ツールの選択には「マインド」が表れる
「こういう働き方をしていく組織でありたい」
「このツールを使いこなせる文化を、これから育てていきたい」
そんな意志や価値観は、ツール選定のプロセスの中に自然と滲み出ます。
ITリテラシーや操作性といったスペックだけではなく、“どんな組織でありたいか”という問いが、選択に深く関わってくるのです。
デジタルとの付き合い方に、意志を持とう
あふれるツール、変化の速い技術。
そんな時代だからこそ、私たちに問われているのは「何を使うか」ではなく、「どう向き合うか」です。
- まずは、小さく試す
- 目的や課題に立ち返る
- リテラシーの差を前提にする
- 組織のマインドを投影する
大切なのは、“便利そうだから”ではなく、“何のために使うのか”を自分たちで選び取ること。
その積み重ねが、ITツールに振り回されない組織づくりの第一歩になります。
ITツールの活用やDX推進に関する課題やお悩みがあれば、お気軽に弊社までご相談ください。
この記事は、株式会社dazzlyの公式Podcast「DX時代の勝ちに行く組織マネジメント」での対話内容をもとに、DX推進や組織変革を考える皆さまに向けて再構成したものです。
Podcast:
Spotify:
出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井
編集・構成:dazzly編集部
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