相手が間違っている。自分の指摘は正しい。
そう確信して声を上げたのに、なぜか自分のほうが問い直されてしまった──そんな経験はないでしょうか。
正しいことを言うのは大事です。 しかし、「正しいことを言った」だけでプロの仕事を果たしたことになるのか。
この問いは、外部のプロフェッショナルとして企業と向き合うすべての人に通じるものかもしれません。
「あなたたちの事業なのに、どうしてそんなに他人事なの」
dazzly代表の筒井は、公式Podcastでこのテーマについて、独立直後の実体験をもとに語っています。
当時、筒井はあるスタートアップ企業にIT担当として業務委託で関わっていました。
もともと教育事業を手がけていたその企業が、事業拡大の一環としてアプリを活用したサービスを立ち上げたいと考えたのがきっかけです。IT知見がほとんどなかったため、システム開発の経験がある筒井に声がかかりました。
アプリの開発が進み、いよいよサービスローンチ前のトライアルの段階に入ります。実際に現場のメンバーにアプリを使ってもらい、バグ出しや既存の教育事業との相乗効果を検証するフェーズです。
ところが、ここで大きな壁にぶつかります。
一番感じたのは、「皆さんの事業なのに、どうしてそんなに他人事なの?」ということだったんですね。
「なんで誰かがやってくれると思っているの?」と。
ITリテラシーがほとんどないメンバーたちは、なぜテストが必要なのかを理解していませんでした。バグがあること自体に戸惑い、「なぜこんなにバグがあるのか」と疑問を持つ一方で、自分たちの事業であるという当事者意識が薄かった。
ITに関する技術的な質問であれば筒井や開発会社に聞けばいい。しかし、事業としてどうしていくかは、本来彼ら自身が考えるべきことです。
筒井はその姿勢に対し、率直に指摘をしました。
「皆さんの事業なんですから、もっとちゃんと考えてください」とか、「わからないとか言っていないで」のようなことを言っていたんですね。
正義感が働いた、しかし──
筒井自身も、それが「正義感」から来た行動だったと振り返ります。
当時は業務負荷も大きく、本来自分がやるべきではない範囲まで引き受けていた部分もあった。そのなかで、当事者であるはずのメンバーの他人事のような姿勢に触れ、つい感情的になってしまったといいます。
私なりには多分正義感が働いてしまったんだと思うんですけど、よくも悪くも。
指摘そのものは間違っていなかった。その場はそれで収まった。
しかし、この後に筒井は、ある人物からの問いかけによって、自分自身のプロ意識を深く問い直されることになります。
「もっと違うアプローチはあったんじゃないの」
そのスタートアップ企業には、外部のアドバイザーが関わっていました。筒井の指摘を見ていたその人物は、後日こう声をかけてきたといいます。
「指摘は全然間違っていないと思う。当然向こうが考えるべきことだし、考えていない彼らに非があるということもあると思うよ」と。ただ、その後に「もし今後プロとして歩んでいくのであれば、もっと違うアプローチはあったんじゃないの?」と言われたんです。
アドバイザーが伝えたかったのは、こういうことでした。
「そもそもITリテラシーがないのはわかっていたでしょ。こういう進め方をしていたときに、こういうことが起こりうることも全然想定内だったでしょ。だとしたら、それを織り込んだ上で、どういうふうに動くのが適切だったか。独立して企業と関わっていくのであれば、その観点から考えてみたほうがいいんじゃない?」
「正しい」と「適切」は違う
筒井はこの言葉を受け、最初は複雑な感情を抱いたと正直に語っています。
むちゃくちゃ言われたときに腹が立ったんですけど。こっちに非はないし、正しいこと言ってるのに、なんで私にダメ出しされるんだろう?って。
しかし、冷静に振り返ったとき、その指摘の本質に気づきます。
「正しいことを言った」のは事実。しかしプロフェッショナルとして求められていたのは、正しいことを言うことではなく、相手の状況を織り込んだうえで、どうすればゴールにたどり着けるかを設計することだった。
IT担当としてすべきことだと思っていたことが、まだまだ全然なんだといいますか。そもそも、IT担当ではないのか、私は。もう少し俯瞰したときに、どうだったか?という話なんだなと。
つまり、「ITの専門家として正しいことを伝える」という枠組み自体が狭かった。
業務委託とはいえ、その事業の成功に関わっている以上、相手を動かすところまでが自分の仕事だったのではないか──そう気づかされたのです。
この一件には、もう一つ見逃せないポイントがあります。指摘をしてくれたアドバイザーは、本来その企業に対してアドバイスする立場であり、筒井に何かを教える立場ではありませんでした。
言わなくてもいい人が、あえて言ってくれた。
それは、筒井のプロとしての成長を本気で考えていたからこそだったのでしょう。
久々にこのことを振り返りましたが、本当にありがたいなと思いました。
想定内のことに怒らない。それがプロの姿勢
この経験から見えてくるのは、プロフェッショナルとしての仕事の捉え方です。
相手のリテラシーが低いことも、当事者意識が薄いことも、最初からわかっていた。であれば、それは「想定内」のこと。想定内のことに対して怒りや正義感をぶつけるのではなく、その前提を織り込んだうえで、どう導くかを設計する。
業務委託やコンサルタントとして企業と関わる人にとって、ここは大きな分かれ道になります。「自分の業務範囲はここまで」と線を引くこともできる。それは間違いではありません。しかし、もう一つのオプションとして「相手の状況ごと引き受けて、ゴールに連れていく」という道もある。
筒井がアドバイザーから問われたのは、まさにこの選択でした。
ドライに割り切ることもできる。それが悪いわけでもない。でも、もう一つのオプションがありますけど、どうしますか──そういうふうに問われた感覚でしたね。
記事について
株式会社dazzlyの公式Podcast「『正しい厳しさ』とは?ープロ意識を問うー」での対話内容をもとに、DX推進や組織マネジメントを考える皆さまに向けて再構成したものです。
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Podcast:
Spotify:
出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井
編集・構成:dazzly編集部

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