プロジェクトを進めていると、上司、他部署、クライアント、取引先──さまざまな方面から異なる要求が飛んできます。 「板挟み」という言葉がぴったりの状況に、身に覚えのあるリーダーは少なくないのではないでしょうか。
「板挟み」の正体は、利害のズレである
プロジェクトリーダーが直面する「板挟み」とは、一体何に挟まれているのか。弊社代表の筒井は、その構造をこう説明します。
ステークホルダーというのは利害関係者という意味です。
なので、まず利害がそれぞれ異なるんですよね。
プロジェクトとしてはこうだけれど、会社の別の部署であればこう、上司であればこう思う。会社が違えばなおのこと、実現したいことが違うわけです。
上司、他部署の担当者、発注先、クライアント──プロジェクトに関わるステークホルダーは、それぞれが異なるミッションや目標を抱えています。
利害が異なること自体は、実は「当たり前の世界」だと筒井は指摘します。
問題なのは、その当たり前を認識しないまま、要求の応酬に巻き込まれてしまうことです。
キックオフの熱量は、なぜ続かないのか
筒井自身、炎上プロジェクトや新規事業の立ち上げなど、板挟みになりやすい環境を数多く経験してきました。
最初はキックオフがあって「よし、やるぞ!」となるんですけど、蓋を開けてみたら期待がズレていることが多かったり、認識がまったく合っていないということばかりでしたね。
キックオフ時にはそれなりの熱量があるものの、実際にはほとんど関わらない人が場の空気だけ作っていたり、表面的な合意だけで進んでいたりする。そうした「見せかけの一体感」が、後になって大きなズレとなって噴出するのです。
各関係者にはそれぞれの思惑があり、それ自体は自然なこと。
しかし、その思惑が可視化されないままプロジェクトが走り出すことが、板挟みの根本原因になっています。
相手の「期待」を知る努力が、自分を助ける
では、どうすればこの構造に対処できるのか。
筒井が実践しているのは、「観察」と「直接聞くこと」の2つです。
例えばキックオフの時に、「普段はどういう立ち位置でやられてるんですか?」とか、「このプロジェクトにはどういう立ち位置で関わられてるんですか?」といったことを聞いたりしています。
名刺交換で肩書きを知っただけで、相手を理解した気になってしまう。
しかし、それはあくまで想像でしかないと筒井は語ります。
相手がどんなミッションを課せられているのか、何を達成しなければならないのか──それを直接聞いて把握しておくことが重要だといいます。
皆さんがどういうミッションを抱えられているのか分からないと、そこに到達しなかった時に何が起こるかも読めなくなってしまうんですよね。
実動部隊の範囲だけでなく、関係者全体を見渡す視野が求められるということです。
「無理難題」が来たとき、何が変わるのか
事前に相手の立場や期待を把握しておくことで、いざ厳しい要求が来たときの受け止め方が変わります。
「また無理難題を言ってきた」
「こちらの気持ちも知らないで」と対立構造を作ってしまうのではなく、「そういえば、ああいう目標や期待があると言っていたから、だからか」という受け止め方ができるようになるんです。
この違いは大きいと言えるでしょう。
言われた内容だけを受け止めると感情的になりがちですが、背景を知っていれば「仕方ないか」と消化しやすくなる。納得感があるかないかで、同じ要求でもリーダーの対応は大きく変わります。
さらに筒井は、背景を知っておくことで「何がズレたから、今そういうことを言ってきているのか」も見えるようになると続けます。
感情ではなく構造で捉えることが、冷静な判断の土台になるのです。
全員の期待に応えることが正解ではない
ただし、すべてのステークホルダーの期待に応えようとするのは現実的ではありません。筒井もそこは明確に区別しています。
誰々さんはここを達成したいんだな、どこどこの会社はここを達成したいんだな、というのが分かったとしても、皆さんの期待にすべて応えられるかというと、そういうわけでもなかったりするので。
大切なのは、全員を満足させることではなく、情報として持っておくことです。
各関係者がどんな期待を寄せているかを把握した上で、「全体を見て、今最善なのは何か」を判断していく。それがプロジェクトリーダーとしての現実的な向き合い方だと語ります。
関係者を「観察する」というリーダーの習慣
筒井は、一見プロジェクトとは無関係に見える人の情報も、意識的に拾うようにしているといいます。
もしかしたらその営業の人がその会社の中では力を持っていたりするかもしれないじゃないですか。だからそういうのも見えてきたりするので。
「自分たちとは関係ない」と耳を塞ぎたくなるような情報にも、実はプロジェクトを左右するヒントが隠れている。関係者を理解するとは、単に立場を知ることではなく、観察し、聞き、情報を蓄積していく習慣そのものだということです。
板挟みに悩むリーダーが最初にすべきことは、交渉術を磨くことではありません。
まず、相手の利害と期待を知ること。
それだけで、「カチンとくる要求」が「理解できる要求」に変わり、対立ではなく対話の糸口が見えてきます。
記事について
株式会社dazzlyの公式Podcast「タイトル:板挟みの苦悩、どう乗り越える?信頼されるリーダーになるには」での対話内容をもとに、DX推進や組織マネジメントを考える皆さまに向けて再構成したものです。
ITツールの活用やDX推進に関する課題やお悩みがあれば、お気軽に弊社までご相談ください。
Podcast:

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出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井
編集・構成:dazzly編集部
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