マイナンバーカードが保険証の代わりに使えるようになり、医療現場でも運用が始まっています。
あるクリニックの受付での出来事。60代ほどの男性がカードを機械に通したあと、受付担当者とやり取りをしていました。
「毎月、読み取らせてくださいね」という説明に対し、男性は不満げにこう返します。
「1回読めば、俺の保険証情報と紐づいてるんじゃないの?勝手に見に行けばいいだろう」
受付は「毎月の読み取りが必要なんです」と説明しましたが、「それじゃ全然便利になってない」と納得のいかない様子。
筒井は、この場面をこう捉えます。
「始まったばっかりなので、システムや裏側の連携、オペレーションはまだ整備途中。現場と利用者の間で“期待値の違い”が出やすい時期です。ゴールだと思わず、これから変わっていくものとして温かい目で見守る必要があります」
“期待値の違い”は組織の中でも起こる
こうした“期待値の違い”や“認識のズレ”は、行政サービスと利用者の間だけではありません。
企業や組織の中でも、上司と部下、マネージャーとチームメンバーの間で日常的に起こります。
「やってほしいこと」と「やっていること」がすれ違う。
双方の期待がかみ合わず、不満や負担が積み重なる──そんな経験は、現場でも少なくありません。
今回は、その中でもよく聞かれるテーマ「1人1人に向き合うと、マネジメントの負荷が高まるのか?」について考えてみます。
「人に向き合うと効率が落ちる」の誤解
多様性や1on1面談の必要性が語られる一方で、「部下一人ひとりに時間を割くと効率が下がる」という声もあります。
「単純に考えれば、確かに時間はかかります。10人いれば10人分の時間が必要ですから。ただ、結果として何が起こるのかという“逆算”で考えることが大事です」(筒井)
もし1人1人と向き合う時間を取らなければ、パフォーマンス低下やトラブル対応に追われる場面が増えるかもしれません。
短期的には「時間がかかる投資」でも、長期的には摩擦や手戻りを減らし、成果を高める可能性があります。
「向き合う」と「マイクロマネジメント」は違う
人に向き合うことと、マイクロマネジメントは混同されがちです。
両者は重なる部分もありますが、必ずしも同じではありません。
マイクロマネジメントは、必要以上に細部まで管理し、相手の裁量を奪ってしまう状態を指します。
イメージしやすい例でいえば、子育てで朝の支度をしている子どもに「あと5分で大丈夫?」「それはもう入れた?」と次々に声をかけるような場面。
本人が自分で判断し行動する機会を奪い、成長を妨げてしまうような関わり方です。
職場でも同様で、「資料はもう作った?」「いつやるの?」「動いてないけど大丈夫?」と逐一確認したり、メール文面に細かく指摘を入れたり──こうした行動が続くと、信頼や主体性を損ないます。
リモートワークで「常にカメラをオンに」と求めるのも、監視に近い過干渉的な行為といえます。
見えてきた個性からマネジメント方針を立てる
では、どう向き合えばよいのでしょうか。筒井はこう話します。
「“全員を常に見張る”のではなく、今見えていることをきっかけにして深めていく。1on1などを通じて対話すると、特性や強み、課題が見えてきます。それをもとに個別のマネジメント方針を立てればいいんです」
表面的な行動だけで判断せず、会話や経験から相手の現在地を把握する。
その上で、役割や期待値とのギャップを埋める方針を設計する──これが「向き合う」マネジメントの本質です。
まとめ
あなたのマネジメントは、「向き合うこと」と「細部まで管理すること」を混同していませんか?
短期的な効率だけを見れば、1人1人に時間を割くことは負担に見えるかもしれません。
しかし、それは現場の摩擦や手戻りを減らし、長期的な成果を生む“投資”になり得ます。
部下の個性や現在地を理解し、それぞれに合った方針を立てる──その一歩から始めてみませんか?
この記事は、株式会社dazzlyの公式Podcast「一人ひとりに向き合うとマネジメント負荷が高まる は本当?」での対話内容をもとに、DX推進や組織マネジメントを考える皆さまに向けて再構成したものです。
ITツールの活用やDX推進に関する課題やお悩みがあれば、お気軽に弊社までご相談ください。
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Podcast:

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出演:筒井千晶(株式会社dazzly 代表)
インタビュアー:土井
編集・構成:dazzly編集部
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